GO-RILLAのパコパコダイアリー

ゴリラがドラムをパコパコします

drumnbase ~それでも私は太鼓を叩く編~

※この作品はフィクションです


登場人物

●いさざわ(主人公)
男、ドラム大好き24歳、独身、日本大手コンドームメーカー{ニュータイプ}にて設計部署に配属、社会人生活2年目の若手社員。

●めがね
男、メガネをかけている、ザ・理系の24歳、独身、いさざわとは同期で同じ職場である、ピアニストである。

●みっちー
男、オールラウンダーの26歳、独身、いさざわとは同期だが職場が異なり商品デザインを手掛ける、ベーシストである。

●たくみ
男、ギター大好き25歳、既婚、八方美人系、いさざわとは同期で同じ職場である。





時は2118年、日本・・・










「設計者心得の唱和!!」


今日はめがねの番だ。


「図面には設計者の魂をいれよう!!」

「「図面には設計者の魂をいれよう!!」」


昼休みが終わると職場では昼礼が行われ、
同じフロアの社員全員で職場の標語の読み合わせが行われる。


「設計をする際は、お客様を常に意識しよう!!」

「「設計をする際は、お客様を常に意識しよう!!」」


その日の代表者が標語を読み、後に社員全員が続く、
今日は私の同期であるめがねに順番が回ってきたようだ。


私はマンネリ化してきた標語を読みながら、ふと今日が
週に一度の楽しみの日であることを思い出す。



セッションの日である。

ここでいうセッションとは、音楽スタジオで楽器を持ち寄って
仲間とともに音楽を奏でることである。

今日は同期のたくみがドラムンベースのネタを作っているので
試したいとのことらしい。


たくみは名前の通りたくみなギタリストで、
今の奥さんは学生時代に、
そのギタープレイで落としたらしい



ドラムンベースの独特の世界観にどんなギターフレーズをチョイスしてくるのか・・・

コード弾き主体でくるのか単音でくるのか、

はたまたワウを多用してくるのか、

それともずっとソロのような形ととるのか・・・



「おい!!いさざわ!!」

「はい!!」

お呼びがかかった、どうやら唱和の時間は終わっていたらしい。
この声は上司だ。
昼休み後のミーティングが始まるようだ。


最近私が勤めるコンドームメーカー{ニュータイプ}はテンガの事業にも手をだし始め、
事業の多角化を狙っているらしいのだが、
上でどんな談合があったか知らないが、
ノウハウも何もないテンガを選ぶというのは何か勝算があるのか、
チャレンジ精神がこの会社の社訓というのはおおいに素晴らしいが、


「まだできてないのか!!お前ちゃんと仕事把握してんのか!!」


怒られているのは私の直属の先輩である。

まだ若手社員の私は先輩のそばでその背中をただ見守るのみ。

ヒアルロン酸添加のジェルの安全性のエビはいつになったらもらえるんだ!!」


どうやらテンガの新素材として、ジェルにヒアルロン酸を添加するそうだ。
私のグループでは先だってお話ししたテンガの新規プロジェクトも
今月から担当することになった。

エビとはエビデンス(証拠)のことで、この場合、安全性を証明する書面なりデータのことを言う。
この業界の人間はおそらく、昔よりエビフライを食らう機会が減っているだろうと私は想像する。


「明日までにメーカーからもらえ!ほかの仕事はいさざわに回せ!」

そしてミーティングが終わった。



「おい、いさざわ」

「なんすか、先輩」

「まあいこうぜ」


「はい」



「まあいこうぜ」とは喫煙タイムのことである。



喫煙ルームにて先輩は吸煙装置をぼーっと眺めながら
なにか考え事をしている。


「はーもうおれ38ぜ・・・」

「38すね・・・」


先輩は今年で38歳を迎える、独身貴族、四十路まっしぐらだ。




自分が38になるころにはどうなっているのだろうか。




正直1年後すら想像もできないのに10年以上先の未来のことなんて、





煙が吸煙装置に吸われて不思議な曲線を描いている。





ミーティングでやることになったコンドームに関する膨大な仕事に意識を傾ける。

今持っている仕事を合わせて、頭の中で簡単に計画を立ててみる。



仕事の山という言葉があるが、あれは量の話をしているのではない。
山によりその向こう側が見えない状況を意味しているのだ。




頭の中で名言っぽいものができてしまった。
こういうのはいつか使ってやろうとは思うのだが、
なかなかそのタイミングになるとその言葉がでてこないし、
また口にしてみると案外恥ずかしい場合が多い。うむ



、、、しかしどうしたものか





思考がショートするとともに頭の中ではドラムンベースが流れ出した。

想像のメロディーにフックのあるドラムを重ねてみる。

スネアのチューニングはどうしようか。





あれよあれよと外の夕日は落ちていく・・・









2118年の日本でも、会社という概念は存在する。
資本主義は継続しており、男と女は愛し合っていた。

繰り返される日常、
昇っては沈みゆく夕日に何を思うのだいさざわ!!
このままでいいのかいさざわ!!


~次回へ続く~